前回、「DTMとは?」要するに何が出来るの?を見ていただきました。少しはDTMに親近感が湧き、高嶺の花から手の届きそうな存在くらいにはなったと思います。
次にDTMをする為に必要な機材を見ていきたい所ですが、その前にどうしても頭に入れておいてほしい事があります。もう少しだけお付き合い下さい。
ここから専門用語がいくつか登場します。初心者にとって、訳の分からないDTM用語を読まされるのは苦行であるのは知っています。ですので出来る限り時間をかけて進みます。分からないものは解決してから先に進みましょう。大丈夫、順を追って読んでいけば簡単です。
シーケンサーとは?
まずは「シーケンサー」。DTMを調べると、度々登場するこの言葉。腹立ちますね~。一体こいつは何者なんでしょう?
「MIDIシーケンサーはMIDIデータを打ち込み再生する所です・・・」
ごめんとしか言い様がありません。そんな事言われてもちんぷんかんぷんです。
そこでシーケンサーを分かりやすくしましょう。この方はずばりあなたの代理演奏者です。
どんな楽器も勝手に音が鳴りだす訳ではありません。そこには必ず演奏者がいて、どんな強さで弾くか、どんな長さで弾くか、楽器に対し指令を与えて音が鳴っています。
DTMでもそれは同じです。「この強さで弾きなさい」「この長さで弾きなさい」と電子楽器に対し指令を与える人がいます。
それがシーケンサーです。電子のギター音やピアノ音は、シーケンサーからの指令を受け、指令通りにスピーカーへと発音しています。(DTMで使用する楽器もろもろの音を「音源」と呼びます。後述)
ですのでシーケンサー本人は音を持っていません。あなたがシーケンサーに「ギターの音を出せ!」と命令しても口をパクパクさせてるだけです。
音源にギターを設定することで、「あなた→シーケンサー→音源→スピーカー」と順を追ってギターの音が流れるんです。映画で例えるなら、あなたが監督、シーケンサーが助監督、音源が役者と言えるでしょう。シーケンサーはあくまであなたの補助、代理をしているにすぎません。
シーケンサーにはハード(画像)とソフトがあります。ハードはDTM普及前から使用されているものです。
現代のDTMではソフトを扱う事が多いですね。
音源とは?
DTMの世界では「音源」という言葉が登場します。これは「音色」ひとつひとつを指します。「楽器」と言い換えてもいいですね。
そして多種多様な音色や楽器がセットになって、一つの音源ボックスに収められていると考えると分かりやすいです。
つまりシーケンサーが「ギターを弾け!」と命令しても「ギターの音源」を持っていない(音源ボックスに入っていない)場合、ギターの音は鳴りません。
ギターの音源を買うか(後述のDAWソフトの中にも入っています)、フリー(0円)で配られている音源をダウンロードし拡張する必要があります。
パソコンには予め音源ボックスが内臓されていて、その中にギター音もありますので、ギターのような音は鳴ってくれます。ただパソコンに元々ある音源は「とりあえずクオリティ」で、生の音とは程遠いものです。
現代ではフリーの音源にも相当クオリティの高い音があるので、始めの内はフリーやDAWソフトの音源を利用してみてもよいでしょう。
打ち込み
指令を与えるといっても、シーケンサーが勝手に動き出し次々と音源に対し命令を与える訳ではありません。そんな勝手な事されたら作曲のハードルが高すぎます。
あくまで貴方が監督、シーケンサーは助監督です。貴方がシーケンサーに対して命令してあげなけないと動けません。その命令方法は「ステップ入力」や「リアルタイム入力」など、ややこしい言葉が出てくるのですが、それらは後回しにするとして、ここではまとめて「打ち込み」と覚えましょう。
鍵盤もしくはマウスで、シーケンサーの入力画面をクリックしていき、どの音源が、どのくらいの長さで、どのくらいの強さを鳴らすのか記憶させていきます。再生ボタンを押すとシーケンサーが記憶を音源に命令します。
画像はドラムを打ち込んだもの。ハイハット・バスドラ・スネア(ドラムのパーツの名前)が打ち込まれています。
MIDIデータ
打ち込まれたそれらのデータを「MIDIデータ」と呼びます。どんな楽器を、どんな強さで、どんなタイミングで弾くか全て記憶されているのですから「楽譜」みたいなものですね。
例えば「俺天才!これは世界を変える曲だ!」と自身満々の曲が出来たとします。そんな時、バンドメンバーにMIDIデータのまま送れば、メンバーはどんな風に打ち込まれた曲なのか楽譜のように確認できる訳です。
ただ何度も言う通りMIDIデータは音を持っていません。あなたが指定していたピアノ音源の音は、メンバーが同じ音源を持っていない限り聴けません。無音ならまだいいですが、うだつのあがらない音源が代用する可能性もあります。「ダッサこの曲・・・」とならないように注意しましょう。(後述の「オーディオ」に変換すればそのままの音で聴けます)
まとめ
つまりMIDIシーケンサーという物を正確にいうならば、「私達の打ち込み(命令)をMIDIデータとして記憶し、音源に対して打ち込み通りに指令を出す機械(ソフト)」という事になります。
そう、ちんぷんかんぷんだった「MIDIシーケンサーはMIDIデータを打ち込み再生する所です・・・」はこういう意味だったんです。
DAWとは?
ついにDAWの登場です。罵詈雑言浴びる覚悟で書きますが、実はDTMを行う上でシーケンサーについてあまり考える必要はありません。大抵DAWというソフトの中にシーケンサーの機能を兼ねそろえているからです。
しかしDAWが何者なのか?を知りたい方は、シーケンサーの意味が分かっているとより理解が深まると思うんです。ですからもう少しだけお付き合い下さい。
前ページで、DAWはパソコンで扱える音楽制作ソフトと覚えておきましょうと書きました。それは正しいのですが、より詳しくいうと、
「シーケンサー機能」に加え、「オーディオ」も扱えるソフトをDAWと言います。
オーディオとは?
「オーディオ」はMIDI以外の音を指します。あなたが楽器を演奏した音、あなたが歌った声、iphoneで録音した音、市販のCD、これら全てがオーディオに分類されます。
DAWとシーケンサーの最大の違いはここで、DAWはMIDIもオーディオも扱えるのですが、シーケンサーだけではオーディオを扱えないんです。(シーケンサーという名前なのにオーディオを扱えるややこしい物もありますが・・・)
画像のボーカル・ギターがオーディオです。
実際にギターを弾きマイクで歌い録音したもの。(ドラム・バイオリン・ピアノはMIDIデータ)
DTMを無料でやろうとフリーソフトを探し、Dominoというソフトに行き着いた方は多いと思います。
しかしDominoはMIDIのみを扱うソフト、つまりシーケンサーなのでオーディオには対応していないんです。ギターの生録音をして編集するといった事は出来ません。(といっても無料で高品質なシーケンサーなので、お金がなくMIDIを扱う場合重宝するソフトです。)
オーディオも扱いたい場合は、フリーのDAWソフトを探さなければなりません。Studio One Prime・MacならGarageBandが初めからインストールされています。
ループ素材とは
オーディオは購入することも、フリーでダウンロードすることも出来ます。DAWソフトの中にも予め何種類かの音が入っています。
例えば曲の中に簡単なドラムリズムが欲しくなった場合、バスドラム、スネア・ハイハットと、MIDIを一つ一つ打ち込んでいくか、自分でドラムを叩いて録音します。でも少し面倒です。ドラムを叩ける環境なんてのも中々ありません。
そこで、プロの方が演奏したドラムオーディオデータを使用しようという訳です。それを貼り付けるだけでドラムリズムが出来てしまうので、わざわざ打ち込んだり演奏して作る必要がないんです。
これは「オーディオ」ですから「音源」と関係ありません。「音源」を持っている必要もありません。プロが実際に使った音そのままを使用出来ます。
またDAWソフトではループ素材と呼ばれるものも扱えます。これもオーディオの1種です。
ループ素材というのは、予め録音されたオーディオを横に引っ張るだけでループして使える素材です。普通のオーディオだと、切って貼ってを繰り返す必要があり切れ目が不自然になりがちですが、ループ音源は伸ばすだけで繋げるので自然な流れを作れます。そちらもDAWの中に入っているので一度みてみるとよいでしょう。
ちなみにMIDIにもループ素材があります。こちらはプロや誰かが打ち込んだMIDIデータです。MIDIですので細かく修正する事も可能ですが、音を鳴らすにはなにかしらの音源が必要です。
その他音にまつわる事
その他にもDAWは様々な事が出来ます。
音に効果をつける(エフェクト)、音をどちらから聴こえるようにするか(パンを振る。サイドギターは右、リードギターは左など)、市販のCD並に聴きやすくする(ミキシング、マスタリング)など前ページで紹介したたくさんの事です。
まとめ
まとめ
このページで出てきた単語、「シーケンサー」「DAW」「MIDI」「オーディオ」「打ち込み」。この5つなんとなく理解出来たでしょうか。
この5つがよく分かっていないまま進むと、「何のソフトを導入していいか分からない」「何の機材を購入していいか分からない」となり「DTM難しい!」と混乱します。
ソフトを購入する場合、大抵はDAWソフトになると思うので、シーケンサーとDAWについては適当な認識でも構いません。
ただ「MIDI」と「オーディオ」の違いはソフトを購入した後にも登場するので、この2つはきっちり理解してから次に進みましょう。